心エコーでLVEFをどう見る?65%・60%・50%・40%・25%・75%のBモード画像で左室収縮を比較
心エコーを勉強していると、「LVEF(左室駆出率)は40%です」「LVEFは50%です」といった結果を目にする機会が増えてきます。
しかし、心エコーを始めたばかりの頃は、
- 「LVEF 65%と50%では、Bモード画像の何が違うの?」
- 「LVEF 40%になると、左室はどのくらい縮まなくなるの?」
- 「収縮期(ES)の画像を見ても、EFが何%くらいなのかイメージできない」
と感じることも多いのではないでしょうか。
LVEFを理解するためには、単に「正常値は○%」と数字を暗記するだけではなく、拡張末期(ED)から収縮末期(ES)にかけて、左室内腔がどの程度小さくなるのかをイメージすることが重要です。
この記事では、心エコーを勉強中の臨床検査技師向けに、A4C(心尖部四腔像)とA2C(心尖部二腔像)のBモード画像を使って、LVEF 75%、65%、60%、50%、40%、25%の左室収縮を比較します。
掲載画像は、LVEFの違いを視覚的に理解するための教育用イメージです。実際の患者さんのLVEFを、Bモード画像の見た目だけから決定するものではありません。
LVEFとは?
LVEFとは、Left Ventricular Ejection Fraction(左室駆出率)の略です。
左室が拡張末期に蓄えた血液のうち、収縮によってどの程度の血液を駆出したのかを割合で示したものです。
基本的な計算式は、
です。
EDVは拡張末期容積、ESVは収縮末期容積を表します。
例えば、
- EDV:100 mL
- ESV:35 mL
だった場合、
となり、LVEFは65%です。
つまり、LVEFを理解するときには、
「拡張末期にどれだけ入っていて、収縮末期にどれだけ残っているのか」
という視点が重要になります。
心エコーでは「ED→ESの変化」を見る
Bモード画像で左室収縮を観察するときは、拡張末期(ED)と収縮末期(ES)を比較します。
拡張末期(ED)
左室が最も拡張しているタイミングです。
左室内腔が大きく見えます。
収縮末期(ES)
左室が収縮して、左室内腔が最も小さくなるタイミングです。
正常な左室では、EDからESにかけて左室内腔が明らかに小さくなります。
したがって、Bモード画像を見るときには、
↓
ES:小さくなる
という変化をまず確認します。
そして、LVEFが低下するほど、一般的には収縮後の左室内腔が大きく残るようになります。
LVEF 65%|正常
まず基準となるのがLVEF 65%です。

LVEF 65%では、拡張末期に十分に拡張した左室が、収縮期になると明らかに縮小します。
画像を見るときには、EDとESを交互に見比べてみましょう。
観察ポイント
- EDでは左室内腔が十分に拡張している
- ESでは左室内腔が明らかに小さくなる
- 左室壁が全体的に良好に内側へ移動する
- EDとESの左室内腔の大きさに明らかな差がある
この状態を、「しっかり縮む左室」としてイメージすると分かりやすいでしょう。
ただし、実際のLVEFはBモード画像を見た印象だけで決定するものではありません。
LVEF 60%|境界域として比較
次にLVEF 60%です。

今回の記事では、65%との違いを視覚的に理解するため、60%を「境界域」として掲載しています。
LVEF 60%を一律に異常値と判断するわけではありません。LVEFの正常範囲や分類は、使用する基準やガイドライン、評価方法によって異なります。
画像では、65%と比較すると収縮末期の左室内腔がやや大きく残るイメージです。
観察ポイント
- EDの左室内腔は正常に近い
- ESでは左室内腔が縮小する
- 65%と比較するとESでの縮小がやや小さい
- 左室全体の収縮は概ね保たれている
ここでは、「正常に近いが、65%より収縮が少し弱い」というイメージで覚えるとよいでしょう。
LVEF 50%|軽度低下として比較
次はLVEF 50%です。

LVEF 50%になると、65%と比較してEDからESへの左室内腔の変化が小さくなります。
特に注目したいのが、収縮末期(ES)に残る左室内腔です。
65%と50%を比較すると?
LVEF 65%では、収縮期に左室内腔がしっかり小さくなります。
一方、LVEF 50%では、収縮期になっても左室内腔が比較的大きく残ります。
つまり、
↓
収縮末期に残る左室容積が増える
↓
EDとESの差が小さくなる
というイメージです。
観察ポイント
- EDでは左室が拡張している
- ESでも左室内腔が比較的大きく残る
- 65%と比較して収縮の程度が小さい
- 左室全体の収縮がやや低下しているイメージ
心エコーを勉強するときは、「50%だから覚える」のではなく、「65%よりESで残っている」と考えると理解しやすくなります。
LVEF 40%|中等度低下として比較
次はLVEF 40%です。

LVEF 40%になると、LVEF 50%と比較してさらに収縮が弱くなり、収縮末期にも左室内腔が大きく残るイメージになります。
50%と40%の違い
LVEF 50%では、
「ESである程度縮むが、正常より残る」
というイメージです。
一方、LVEF 40%では、
「ESになってもかなり大きく残る」
というイメージになります。
観察ポイント
- EDで左室内腔が拡張している
- ESでも左室内腔が比較的大きい
- ED→ESの変化が小さい
- 左室全体の収縮が明らかに低下している
ここまでくると、「収縮期なのに左室内腔がまだかなり大きい」という点を視覚的に捉えられるようになるとよいでしょう。
LVEF 25%|重度低下
さらにLVEFが低下すると、LVEF 25%のような重度の左室収縮機能低下になります。

この画像では、EDからESにかけての左室内腔の変化が非常に小さいことがポイントです。
正常のLVEF 65%では、収縮期になると左室内腔が明らかに小さくなります。
しかしLVEF 25%では、収縮期になっても左室内腔が大きく残ります。
観察ポイント
- EDで左室内腔が大きい
- ESでも左室内腔が大きく残る
- ED→ESの変化が小さい
- 左室全体の収縮が著しく低下している
つまり、
「収縮しているのに、左室腔があまり小さくならない」
という状態をイメージしてください。
LVEF 75%|過収縮
最後に、LVEF 75%の過収縮を見てみます。

LVEF 75%では、EDからESにかけて左室内腔が非常に大きく縮小するイメージになります。
観察ポイント
- EDでは左室内腔が十分に拡張している
- ESでは左室内腔が非常に小さくなる
- ED→ESの変化が非常に大きい
- 左室壁の内側への移動が良好
つまり、「ギュッと強く縮む左室」というイメージです。
ただし、LVEFが高いことだけをもって病的と判断することはできません。
脱水、循環血液量の変化、高拍出状態など、臨床背景によって収縮が強く見えることもあります。
6つのLVEFをBモード画像で比較
ここまでの6つをまとめてみましょう。
| LVEF | ED→ESのイメージ | 覚え方 |
|---|---|---|
| 75% | 非常に大きく縮小 | ギュッと縮む |
| 65% | 明らかに縮小 | しっかり縮む |
| 60% | 良好に縮小 | 65%より少し小さな変化 |
| 50% | 縮小するがESで比較的残る | 少し残る |
| 40% | ESでかなり残る | かなり残る |
| 25% | ESでも大きく残る | ほとんど縮まない |
この表をそのまま暗記するよりも、
LVEFが低下すると、収縮末期(ES)で左室内腔が大きく残る
という基本的なイメージを持つことが重要です。
A4CとA2Cはなぜ両方見る?
LVEFの評価では、A4C(心尖部四腔像)だけでなくA2C(心尖部二腔像)も重要です。
A4Cでは、
- 左室
- 右室
- 左房
- 右房
を同時に観察できます。
一方、A2Cでは左室と左房を中心に観察できます。
左室を一方向からだけ見るのではなく、複数断面から評価することで、左室全体の形態や壁運動をより適切に評価できます。
特にLVEFを定量評価する場合には、A4CとA2Cを用いたbiplane Simpson法が重要になります。
Simpson法とは?
LVEFを定量的に評価する代表的な方法の一つが、Simpson法です。
特に2断面を用いるbiplane Simpson法では、A4CとA2Cから左室内腔を評価し、左室容積を算出してLVEFを求めます。
基本的には、
↓
ESVを求める
↓
LVEF=(EDV−ESV)÷EDV×100
という流れです。
ここで重要なのは、
「Bモード画像を見て、なんとなくEF 40%」
という評価と、
「左室容積を定量的に測定してLVEFを算出する」
という評価は別物だということです。
Bモード画像だけでLVEFを決めてはいけない理由
心エコー画像を見て、
「これはEFが低そう」
と感じることはあります。
しかし、実際のLVEF評価では画像の見え方以外にも注意すべき点があります。
- 心尖部が十分に描出されていない
- 左室が短縮されて見えている
- A4CとA2Cの断面が適切でない
- 心内膜が不明瞭
- 局所壁運動異常がある
- 不整脈によって拍動ごとの容量が変化している
- 画像品質が十分でない
そのため、
Bモード画像は「左室収縮を理解するための入口」
として活用し、実際のLVEFは適切な定量評価と臨床情報を合わせて判断することが重要です。
LVEFを評価するときに臨床検査技師が注目したいポイント
心エコーを勉強中なら、LVEFの数字だけを見るのではなく、次のポイントも一緒に確認してみましょう。
① 左室の大きさ
左室が拡大していないかを確認します。
② EDとESの差
拡張末期と収縮末期で、左室内腔がどれくらい変化しているかを確認します。
③ 左室壁運動
全体的に動いているのか、一部だけ動きが低下しているのかを確認します。
④ 心尖部
心尖部が十分に描出されているか確認します。
心尖部が短縮されていると、左室容積を正確に評価できない可能性があります。
⑤ A4CとA2Cの整合性
A4CとA2Cで左室の形態や壁運動を確認します。
⑥ 数値と画像を結びつける
「LVEF 40%」という数字だけを覚えるのではなく、
「40%ならEDからESにかけてどの程度縮むのか」
を画像と結びつけて覚えます。
LVEFの数字だけで判断しない
心エコーではLVEFが非常に重要な指標ですが、LVEFだけですべてを判断することはできません。
例えば、
- 左室径
- 左房サイズ
- 左室壁厚
- 局所壁運動
- 弁膜症
- 拡張機能
- 右心機能
- GLSなどのストレイン
- 心拍数
- 血圧
- 患者さんの症状
など、さまざまな情報を組み合わせて評価します。
また、LVEFの正常範囲や心不全における分類は、ガイドラインや評価目的によって異なります。
「LVEF 50%だから必ず異常」「LVEF 60%だから必ず正常」と単純に判断するのではなく、使用している基準と臨床背景を確認することが大切です。
心エコー初心者は「EFの数字」より「ED→ES」を見る
心エコーを始めたばかりの頃は、
- EF 65%=正常
- EF 40%=低下
と数字を暗記したくなります。
もちろん数字を覚えることも大切です。
しかし、それだけでは実際の画像を見たときに評価できません。
まずは、
EDで左室はどのくらい大きい?
↓
ESでどのくらい小さくなった?
↓
壁はしっかり内側へ動いている?
という順番で見る習慣をつけてみましょう。
そして、その画像の印象とLVEFの数値を結びつけます。
この練習を繰り返すことで、
「EF 40%ってこういう収縮なんだ」
「EF 25%になると、ESでもこんなに左室腔が残るんだ」
という視覚的なイメージが身についてきます。
まとめ
LVEFを理解するうえで重要なのは、単に数値を暗記することではありません。
拡張末期(ED)から収縮末期(ES)にかけて、左室内腔がどの程度小さくなるのかを見ること
が基本的なイメージになります。
今回の画像を使った比較では、
- LVEF 75%:非常に強く縮む
- LVEF 65%:しっかり縮む
- LVEF 60%:正常に近い収縮
- LVEF 50%:ESで比較的左室腔が残る
- LVEF 40%:ESでもかなり左室腔が残る
- LVEF 25%:ESでも大きな左室腔が残る
という視覚的な違いとして捉えることができます。
ただし、これらはあくまでLVEFの違いを理解するための教育用イメージです。
実際のLVEF評価では、適切な心尖部断面を描出し、A4C・A2Cなどから左室容積を評価することが重要です。
心エコーを勉強中の臨床検査技師の方は、
「LVEF○%」という数字を見るだけではなく、
「EDからESで左室がどう変化したのか」を見る
ことから始めてみてください。
よくある質問(FAQ)
Q1.LVEFとは何ですか?
LVEFは左室駆出率(Left Ventricular Ejection Fraction)のことで、左室が拡張末期に蓄えた血液のうち、収縮によってどの程度を駆出したかを割合で示した指標です。
Q2.LVEFはどのように計算しますか?
基本的には、
LVEF(%)=(EDV−ESV)÷EDV×100
で計算します。
Q3.LVEFが低下すると心エコー画像ではどう見えますか?
一般的には、拡張末期から収縮末期にかけた左室内腔の縮小が小さくなり、収縮末期にも左室内腔が比較的大きく残るようになります。
Q4.LVEF 50%は正常ですか?
LVEF 50%の評価は、使用する基準や臨床状況によって異なります。LVEFの数値だけで正常・異常を一律に判断するのではなく、使用しているガイドラインや評価基準、他の心エコー所見と合わせて判断する必要があります。
Q5.LVEF 40%では何に注目しますか?
収縮末期でも左室内腔が比較的大きく残ること、EDからESへの左室内腔の縮小が小さいこと、左室全体の収縮が低下していることなどに注目します。
Q6.LVEF 25%ではどのように見えますか?
重度の左室収縮機能低下では、収縮期になっても左室内腔が大きく残り、EDからESにかけた左室内腔の変化が小さくなります。
Q7.LVEF 75%は異常ですか?
LVEFが高いことだけで異常と判断することはできません。循環血液量や心拍出量などの臨床背景も含めて評価する必要があります。
Q8.A4CとA2Cの両方を見るのはなぜですか?
左室を異なる断面から評価することで、左室の形態や壁運動をより適切に評価できるためです。また、2断面を用いたbiplane Simpson法によるLVEF評価にもA4CとA2Cが用いられます。
Q9.Bモード画像だけでLVEFを測定できますか?
Bモード画像は左室収縮を視覚的に評価するうえで重要ですが、画像を見た印象だけで正確なLVEFを決定することはできません。適切な定量評価が必要です。
Q10.心エコー初心者はLVEFをどう勉強すればいいですか?
まずはLVEFの数値を暗記するだけではなく、A4C・A2CのEDとESを見比べて、左室内腔がどの程度縮小するのかを確認することがおすすめです。その後、Simpson法などの定量評価につなげていくと理解しやすくなります。
本記事および掲載画像は、心エコー学習を目的とした教育用コンテンツです。掲載しているLVEFの数値とBモード画像の組み合わせは、各数値の違いを視覚的に理解するためのモデルです。実際の患者さんのLVEF評価では、適切な断面・画質・測定方法・臨床情報などを総合的に考慮してください。
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